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物語みたいなものを書いてみます。
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擬似家族
実家に帰省する際、
僕はよく各駅停車で何時間もかけて帰ります。
今年のお盆のことです。
いつものように各停でトコトコ帰る途中、
「擬似家族」と出会いました。

ボックス・シートに中年男性が窓際に一人で座っていました。
その斜め向かいに僕が座り、
しばらくすると中年の女性が僕の向かいに座りました。
少し経って、どこかの高校の制服を着た女の子が
僕の隣に座りました。
40代後半の夫婦、大学生くらいの息子、そして高校生の娘。
「擬似家族」を乗せた電車はゆっくりと発進しました。

娘は携帯電話をひとしきりいじった後、
ふてくされたように目を閉じています。
息子は音楽を聴きながらじっと考え事をしているようです。
母はバッグを膝の上で抱えた体勢をずっと崩しません。
父は得意げに携帯電話を操りながらも、
落ち着きなく外の風景に目をやっています。

いつまで経っても四人の間で会話は始まりません。
この家族の間で言葉が交わされないのは、
当人たちにとってごく普通のこと、
もしくは習慣なのかもしれません。

やがて僕は目的の駅で下車し、
この「擬似家族」から本当の家族の元へ向かいました。

ひとつの空間を20分ほど、
たまたま共有したという話なのですが、
まあ、「袖振りあうも…」というところでしょうか。

2004.09.01
by 4n8f | 2004-09-01 12:32 | 日常のひとコマ

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