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物語みたいなものを書いてみます。
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歩く歩く歩く。どこまで続いているか分からない一本道を、歩く。空は快晴、風は少々。青空にふわっと浮かぶ一切れの雲は、まるで私がかぶっている帽子みたいだ。帽子、帽子。少し気になったので帽子の位置を直す。違うかなと思い、また直す。たぶん、最初とほとんど変わっていない。まあ、よくあるんだ、こういうことは。



ピアノの音が聞こえる、ギターの音も聞こえる。名前の分からない楽器の音が聞こえ、その間を語りかけるような歌がすり抜けていく。iPodのボリュームはいつもと同じなのに、いつも以上に大きく聞こえる気がする。人がいないせいだ。時々、自転車に乗った人とすれ違う。何を急いでいるのか分からないけれど、立ちこぎで駆け抜けていった。マイペースにのろのろとこぐおじいさんもいる。ゆっくり進んでいるのに、車輪がひとつ多いんじゃないかってくらい安定している。

ちょっとした用があって、平日の昼間、路線バスに乗ったことがある。私が乗っていくつかの停留所を過ぎたところで、やたらとたくさんのおじいさんおばあさんが乗りこんできたのを覚えている。おじいさんだかおばあさんだか判別できない人たちが、切れ目なく乗るわ乗るわ。シートを埋め尽くす老人の大群、っていうと怒られるかもしれないけれど、とても奇妙な光景だったな。バスを降りて、大きく息を吸って吐きながら、去っていくバスを見送った。あれは何だったんだろう。

おろしたてのスニーカーが地面と触れ合う感触はとても好き。身体が軽くなった気がする。真新しい靴が恥ずかしいと言う子も周りにはいるけれど、私は気にならない。むしろ、快晴で始まる朝みたいで、きれいな方が気分はいい。落ち葉を踏む感触も、くしゃっという音も違っている気がする。靴が変わると世界が変わる。ささやくような歌とギターが聞こえる。

シャカシャカという音が聞こえたかと思うと、ウィンドブレーカーを着た男の人が走って私を追い越していった。私も以前は走っていたことがある。何を思ったか、早朝ランニング。MDプレーヤーをポケットに入れて、寒い寒いとつぶやきながら走った。いろんなものが始まる少し前の街をゆっくりと駆け抜けていくのは、不思議な気分だった。自分だけがここに取り残されたような感じがして、ちょっと寂しくて、ちょっとほっとして。

帽子を取る。空に浮かんでいた雲は、もうどこにも見られない。まだ太陽は元気で、道はまだまだ続いている。風はちょっと冷たい。そろそろ髪を切ろうかなと思う。
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by 4n8f | 2007-03-11 19:08

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