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初めて来た駅。大きなビルがあちこちにあるのに、人影はまばら。休みの日だから? 雨が降りそうだから? 改札を抜けて地上に出た瞬間、あまりにも少ない人通りに拍子抜けしたほど。待ち合わせに遅れて少し走った自分がちょっと恥ずかしい。かろうじて見かける人たちは、なんだかリラックスしている。土曜日の夕方というせいかもしれないし、少し暖かくなってきたせいかもしれないし、単に自分が焦っていただけのことかもしれないな。待ち合わせの場所は、すぐそこだ。私を見下ろしている無口なビルたちを、私は歩きながら見上げてみる。

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初めて来たカフェ。少し緊張しながら、ドアを押し開ける。友達はすぐに見つかった。四人がけの四角いテーブルにつく。90度の角度のところに座る。対面に座るよりもリラックスできる気がする。向かい合ってもいいんだけど、別に。私が座ると同時に、友達がメニューを差し出してきた。すっごい気が利く子。一緒にいると楽なんだけど、時々とても申し訳なくなる。そんなに気を遣わなくてもいいのに、って。言えないけど。

メニューを開くとコーヒーのいろんな銘柄が目に入った。一日に何杯もコーヒーは飲めないので、ミルクティーにする。オーガニックと言われても、よく分からない。身体にいいのかもしれないけど、そもそもコーヒーが身体にいいとは思えないなぁ。そんな話を友達にしてみると、じゃあ何がいいのかなという話になり、やっぱり野菜でしょというノーマルな結論に達した。こんな話につきあわせてしまってごめん。

曇っているから、暗くなるのも早い。気付くと、天井の照明がちょっと弱くなっていた。外が暗くなっただけかと思ったけど、照明も暗くなっている。外にあるテーブルにはキャンドルがあって、小さな火が揺れている。寒くないの? キャンドルを囲むように座っている人たちを見ると、思わず心配になった。私がそっちを向いていたせいか(ついでに呆れた顔をしていたと思う)、友達が同じ方向を見て寒そうだよねと言った。冬のオープン・カフェなんて、何かの罰ゲームなんじゃないかなとさえ思う。

もう一段階、照明が暗くなった。今度ははっきりと分かった。そろそろ行こうかと私は言った。外は真っ暗。会計をまとめて済ませてくれた友達に、ミルクティーのお金を渡して、外に出る。雨は降っていない。あまり必要だとも思わないけれど、マフラーをぐるぐる巻いた。冬は早く過ぎ去ってほしいと思う。でもあまりにも冬っぽくないと、それはそれで寂しい気がする。春が待ち遠しい、なんて感覚もないかもしれないから。いっつも優しいよりは、たまに優しい方がいい、ってのと似てる? 似てない?

改札の前で友達と別れる。彼女はあっちの線で、私はこっちの線。友達の後ろ姿を見送りながら、ここにもう一度来ることはあるのかなと考えてみた。やたらと物静かなビルと、ちょっと寒そうなキャンドルの火。違う季節に来れば、印象は変わるかもしれない。その頃にはいろんなものも違っているかもしれないし。ドアが音を立てて閉まり、電車がするすると動き出した。
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by 4n8f | 2007-03-11 19:21

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