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物語みたいなものを書いてみます。
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ApplesOnTheStreet
目の前のシートに綺麗な女性が座った。沢山の荷物と、白いコート、そして真っ赤な帽子。手には折りたたまれた紙、地図かなと思ったら線がいっぱい引いてあって、電車のダイヤみたいにも見えるし、意外と鉄道マニア? …なーんて思ったら「前身ごろ」とか書かれている。ああ、ファッション・デザインか。とすると、足元に置いた大きな紙袋の中身は、大量の布だと思う。終点の駅に着いたので、その人の後に続いて降りる。真っ白なコートは黒いコートの大群に塗りつぶされてしまうけど、その赤い帽子はビビッドで、やたら目立っている。黒の間をすり抜けていく赤い帽子。途中の階段を降りてしまったのか、その真っ赤な帽子も見えなくなった。



ひだまりから身体を引きはがすように立ち上がり、記憶の中の猫をそこに置き去りにして、電車を降りる。猫はずっとまるくなって眠るんだ。私はホームを歩きながら、少し強くなった風に身をすくめた。私が同じくらいの年齢の人たちでごったがえす街に出る。何回か来ているけど、未だに道が分からない。もともと方向感覚はよくないのに、ぐしゃぐしゃと交差する道が私を余計に混乱させる。人が多い、多い。人混みを避けようとすると完全に迷うので、仕方なく紛れる。空から見たら私がここにいるってことは分かるかな?

古着屋を冷やかし、雑貨屋の中を意味もなく一周する。前はとても興味があって、ことあるごとに古着を買って、珍しい雑貨を探したものだ。今は飽きたというか、特に魅力を感じないだけなんだけども、そんなに欲しいものって無いんじゃないかと思う。欲しいと思ってやっぱりやめようかなと思ったら、前は買っちゃえって思った。今は、それっていらないってことじゃないの? と思う。欲しい×欲しい=欲しい、欲しい×欲しくない=欲しくない。これショッピングの方程式。

この街に来たときはこのカフェに立ち寄る。毎回、迷いに迷った末にたどり着く。人通りの多いところから少し外れた、静かな通りにある、マンションの部屋みたいなカフェ。窓際の席に座って本を読む。友達を連れてきたこともあるけど、一人で本を読むのがお似合いの雰囲気だ。ここにはギターを背負った人はいないし、熱く演劇論を語る人もいない。少なくとも私はそういう人をここで見たことがない。近くには音楽をやっている人たちが集まるバーがあるらしいけど。

ぼーっとしていたら、角砂糖を入れすぎた。取り出すのも気が引けたので、スプーンでかき混ぜてしまう。見るからにどろっとしたコーヒーになって、ひとくち飲んでみると甘い甘い甘い! 水とコーヒーを交互に飲む。子供の時に飲んだ、甘ったるい風邪薬みたいな味がする。あの頃は風邪を引いた時の唯一の楽しみだったけど、今となっては飲みたくはないなあ。身体の調子が悪くなる気がしたけど、少しずつ飲めばなんとか大丈夫なので、なめるように飲んでいった。お陰で、本の中でどうでもいい口論を続けるカップルが、どうでもよくなった。本を閉じる。またあとで。
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by 4n8f | 2007-03-11 19:21

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