mtroom
物語みたいなものを書いてみます。
ブログトップ
OpenTheEmptyBox
風に煽られて、ちょっとよろける。久しぶりに歩く歩道橋は、思ったよりも狭くて、思ったよりも低かった。ライトをキラキラさせながら沢山の車が走っている。途切れない途切れない途切れない…車の流れが途切れた瞬間に、ちょっとした寂しさを感じる。オレンジ色の街灯がぽつんといるだけの、交差点。向こうの赤信号で停まっていた車がすぐにやってきて光の列ができるのだけど、それまでのからっぽな交差点は退屈そうな顔をしている。かまわれるとうっとうしい、でもほっとかれるとさびしい。どうしようもないね。



交差点を渡る人の波の中にまぎれる。まぎれるというよりは巻き込まれるという感じなのだけど。別に上京したての戸惑いってわけではないけれど、何度経験してもこの大移動には慣れない。動き出しを待つ間も、交差点を渡る間も、渡り切って駅に向かう間も、息苦しさを感じる。どれだけの人が、一度に動くんだろうと思う。野鳥の会に数えてもらったらどうだろう。カチカチ、カチカチ。高いところから見下ろして、カチカチ。

下を見下ろしてみると、小さな影が目に入った。女の子のように見える。どこかで見たような気がする。この前、美術館で会った子。思い違いかもしれない。都合のいいこじつけかもしれない。顔なんてほとんど見えないのに、小さな女の子っていうだけで、あの子の顔が浮かんだ。あのちょっと首を傾げた仕草。確かめたい。ひとりで歩いているのも気にかかる。

この前スクランブル交差点歩いてた? と友達に言われたことが3回ある。その日はそこにいなかったんだけど、なんでだろ。声をかけることができないくらいに離れていたみたいで、まあ単なる人違い、他人の空似。それとも、ド…なんとか、あれ。挙動不審っぽかったし、絶対そうだと思ったんだよね、と友達。ほっといてほしい。あそこではそんな感じになるのも分かるけど、普段はそれほどでもないのに。

急いで歩道橋を降りて、女の子のいたところを見てみる。案の定、いない。ドラマでよくあるなあ、こんなシーン。そんなのを演じている自分が微妙すぎる。それはそれとして、女の子が歩いていた方向に向かう。ノーマルに考えれば、すぐに追いつくと思う。問題は、追いついてどうするかってことなんだけど。いきなり顔を覗き込んだら危険な人だし、一度追い抜いて来た道を戻るふりして確認するのもどうかと思うしなぁ。

見つからない。いくら歩いてもそれっぽい子が見えない。どこかの角を曲がったのかもしれない。SFものだったら幽霊とかそんな感じなんだろうけど、とりあえずここは小説の中でもないし、テレビの中でもないから、私が見失っただけっていう結論に落ち着く。それに、全くの別人ってこともあるしね。すっぱいブドウってやつだ。

歩いてきた道を戻る。そして歩道橋があるところまで来る。今度は歩道橋を見上げる。そこにあの子がいたら、飛び上がっていたかもしれないけれど、小説でもテレビの中でもないから、誰もいない歩道橋が目に入っただけだった。少し前まではあそこに自分がいたのかと思うと、少し不思議な気がした。そういえば、今私が立っている場所は、女の子がいたところなんじゃないの? さっきの私は下にいる私を見ていたのかな。下にいる私は、さっきの私を見ていたのかな。そんなのフィクションだ。きっとそう…たぶん。
[PR]
by 4n8f | 2007-04-21 23:26

4N8が書いていま、す
カテゴリ
音楽レビュー
フィクション
ライト・舞台
音楽配信
文章・デザイン
著作権・DRM
ライフスタイル
日常のひとコマ
そのほか
タグ
(26)
(15)
(6)
(4)
(3)
以前の記事
2009年 02月
2008年 11月
2008年 08月
more...
メイン・ブログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
そのほか