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物語みたいなものを書いてみます。
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GoodDaysGoodBye
傘がない、傘がない。いきなりの天気雨だ。それほど強くもないんだけど、パラパラってほどでもない。もう濡れてもいいや、このまま歩こう。髪の毛、もうぐしゃぐしゃだな。風も強い。土の匂いがする。雨が運んできたんだ、懐かしい匂い。ここにいた頃は普通だったんだけど、コンクリートの中にいると絶対感じない匂いだ。懐かしい道を歩くと、景色が、匂いが、あの頃を思い出させてくれる。いいことも、嫌なことも、半々くらい? 都合の悪いことは忘れちゃえ、でも、ワンセットで思い出は蘇るみたいだ。

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小さい頃によくお世話になった病院は、まったく変わってないようにも、あちこちが変わっているようにも見える。外科とか内科とかを案内するプレートの文字は古さ全開で、やっぱり変わってないのかなと思う。廊下は意味もなく明るかったり、突然暗いところができていたり。何だか小学校みたいな感じがする。蛍光灯って寂しさ全開。その下にいるだけで何もかも嫌になる。どんよりしているのは病院だからってだけじゃなくて、蛍光灯のせいもあるんじゃないの?

来た。病院の匂いだ。入った瞬間に感じる。独特だとはよく言われるけど、その通りだと思う。なんだろう、現実感がなくなるというか、意識が遠くなるというか。身体から魂みたいなものがするするっと抜けて、身体より前を漂っているイメージかな。エクト…プラズマ? プラズム? 気持ちよくはないけれど、かと言って気持ち悪いわけでもない。肌にぺたっとくっついてくるような匂い。

おばあちゃんが亡くなったときもそんな匂いがしていた。もう10年前だ。ここじゃない、別の病院だったけども、入った瞬間に感じていたと思う。あれは亡くなる数日前。手を消毒して、なんかビニールのカッパみたいなものを着て、ビニールにくるまれたメキシコ人といった格好で病室に入った。そろそろだってことを聞かされていて、これが最後(最期)なのかなと思いながら、意識のないおばあちゃんのそばに行った。意識がないけど生きているってどんな感じなんだろうと思いながら、その顔をじっと見ていた。

目が開いた。寝ていただけなんじゃんと思ったけれども、後で話したらけっこう驚かれた。ずっと意識はなくて、それ以降も戻っていなかったみたい。私が行った時も意識は戻っていなかったと思うけど、目が開いたのはどういうことなんだろう。神秘だとか奇跡だとかではないだろうし、私の勘違いってこともあるけど、私は最後に目が合ったんだと思っている。私の姿を見てくれたのかな。

雨が降ると草の匂いがする。この季節のいいところは、それ。雨は嫌だけども、匂いは嫌いじゃない。鮮やかな緑色が、匂いを引き立たせてくれる。いろんなことを思い出しながら、懐かしい坂道を下る。傘はなくても、思い出はある。昨日は今日につながっているんだ。
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by 4n8f | 2007-05-06 15:50

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