物語みたいなものを書いてみます。 |
東京から1時間ちょっとで、世界が変わる。新幹線に乗る前は蒸し暑くて参っていたけれど、降りた途端にむしろ寒さで震えた。少し経つと身体が涼しい空気に慣れる。深呼吸をしてみる。空には丸い丸い月が輝いている。冬でもないのにキラキラ輝くのは、やっぱり空気がキレイだから? いつもより月が近くにある気がするのは、高いところに来たから?
いつの間にか新幹線が動き出していた。週末の車内はくたびれたスーツを着た、くたびれた男の人が多い。缶を開ける音があちこちから聞えてくるんだけど、まあビールとかチューハイだろうなあ。うわーって思うけど、今さら席を立つわけにも行かないから、適当にやり過ごすしかない。ラッキーなことに、私の隣に座った人はずっと本に向かっている。隣で飲み出したら、もう最悪。開かない窓を叩き割って飛び出してやろうかって思うかもしれない。 夜の街を通り過ぎていく。しばらくすると街の光も見えなくなって、暗い中を走っていく。夜は暗い、って当たり前のことなんだけど、それが当たり前じゃなくなっている自分の感覚に驚いた。明るすぎる街の光を見ると安心して、薄暗い街灯しかない道を歩くと怖くなる。地元にいたころは暗いのが当たり前だったのにな。窓の外には、ぽつりぽつりと小さな光。派手に光る橋とかビルもキレイって思うんだけど、やっぱり小さく暖かく光っている家の明かりの方がいいよね。 中学生の頃の思い出がぽっと浮かんだ。中途半端にしか親に逆らえなくて、結局何もできなかった私。こんな家飛び出してやるって思って(時には宣言して)も、ネコの世話は私しかできないんだとか言い訳して自分を納得させていた。まあそんなものでしょ。すり寄ってくるネコを抱き上げると、むしゃくしゃしていた気持ちもどこかへ飛んでいった。単純単純、とっても単純。 ふっと目を開けると、トンネルの中を走っていた。気付かないうちに眠っていたみたいだ。すっかりぬるくなったペットボトルのお茶をひとくち飲む。小さく伸びをする。中途半端な伸びは余計に気持ち悪いな。早くトンネル抜けないかなーと思っていたら、案の定、抜けた。暗いっていう意味ではあんまり変わらないんだけど。 車内アナウンスがもうすぐ着きますと言っている。友達に迎えにきてメールを送る。運転しながらメールができる子なんだけど、助手席には乗りたくないね…でも今日は乗らなきゃいけないから、ちょっと、いや、かなり怖い。ケータイ見せてって言って取り上げちゃえばいいのか。無事ホテルに着きますように。空から私を見下ろす月に、そっと祈ってみた。
by 4n8f
| 2007-07-14 18:39
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