物語みたいなものを書いてみます。 |
とっくに日付は変わっているのに、まったく眠くない。いつもならこの時間は夢の中だっていうのに。頭が冴えているというというより、からっぽになった気分。弱い雨が降り続く中、からっぽの私は歩く。時々私を追い越す車が立てる音も、どこか現実感がない。からっぽの私をいろんなものが通り過ぎていくんだ。オレンジ色の街灯は路面に反射してきらきらしているんだけど、ただそこにあるだけ、って感じがする。真夜中のコンビニと同じ。私はその前を通り過ぎるだけ。
いつも私の心を震わせてくれる音楽も、からっぽな私にはただの音に過ぎない。決して耳障りなわけではないけれど、中に入ってくる感覚がない。いや、入ってはくるんだけど、やっぱり通り過ぎているのかもしれない。雨のせいか、真夜中のせいか、それとも私のせい? たぶん、私のせいだ。雨が降っていなくても、昼間であっても、からっぽな私はやっぱりからっぽなままだと思う。いつまでこんな感じでいるんだろう、ずっとこのままなのかな、それは怖い気もするけれど。からっぽな感じを抜け出したいわけでもないし、別にこのままでもいいやとも思う。からっぽな私のからっぽな思考回路は、どこまで行ってもやっぱりからっぽだ。歩いていることも傘をさしていることも忘れる。お気に入りのデザインの傘もこんな真夜中じゃそこらへんの真っ黒な傘と大して変わらないよ。ろくでもないことが頭に浮かぶ。すると、道が大きな道路にぶつかった。右と左。私が進まなきゃいけないのはどちらかだ。戻る、っていうのもあるけど。私は立ち止まった。どっちでもいいのに、どっちでも大して変わんないのに。私は考えた。右の道、左の道。目の前を右に左に車が走り去る。タクシー、トラック、バイク、時々自転車。いろんなものが目の前を通り過ぎる。私はぼんやり立っている。右手は傘の柄、左手はコートのポケットの中。右耳からはピアノの音、左耳からはギターの音。さて、行こうか。私は歩き出す。
by 4n8f
| 2007-10-27 16:36
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